在留邦人の皆様へ
2009年10月16日
在フィリピン日本国大使館
先般、フィリピンを横断した台風16号(ONDOY)及び17号(PEPNG)により、フィリピン各地で大きな被害が報告されていますが、最近、フィリピン保健省は、洪水被害の大きかった地域において、感染症であるレプトスピラ症の感染が広まっており、16日までに1,026件の感染、89件の死亡例が報告されていると発表しました。
つきましては、洪水被害に遭われた場合や被害地域に赴く場合には、ご家族や使用人等を含め、次の諸点を参考にし、感染予防にご留意下さい。また、レプトスピラ症以外にも破傷風やコレラなど汚水を媒介とした感染症も懸念されますので、あわせご注意下さい。
1. レプトスピラ症とは
レプトスピラ症(日本ではワイル症、秋疫とも言われる)は、レプトスピラ属の微生物によるすべての感染症を表す包括的な用語です。レプトスピラ症は、多くの家畜または野生動物宿主に起こる人獣共通の感染症であり、不顕性の疾病から致命的な疾患まで様々です。
2. どのように感染するのか
ヒトへの感染は、菌を含む水を飲用し感染する場合と、菌を含む水や尿、土に触れて皮膚から感染する場合があります。通常、すりむけた皮膚や外部に曝された粘膜(結膜,鼻粘膜,口腔粘膜)がヒトへの侵入口となります。感染はどの年齢でも起こります。レトプスピラ症は職業病(例、農夫、下水や屠殺場で働く人)でありますが,洪水などの際には多くの人に感染機会が生じます。犬やねずみも一般的な感染源であると言われます。
3. 潜伏期間と臨床症状
潜伏期間は2~20日間(通常7~13日間)です。悪寒、発熱、頭痛、全身の倦怠感、筋肉痛、腰痛などを伴います。眼球結膜の充血が特徴的で、3~4日目に現れると言われます。
この期間が4~9日間続き、その間、悪寒やしばしば39℃以上にもなる発熱を繰り返した後、熱が下がり、その後6~12日目に、発熱と以前の症状がぶり返し、髄膜炎の徴候が現れることもあります。まれに虹彩毛様体炎、視神経炎、そして末梢神経障害が起こることがあります。妊娠中に感染した場合は、回復期であっても流産を起こすことがあり注意が必要です。
ちなみに、ワイル症候群(黄疸性レプトスピラ症)はレプトスピラ症の劇症形で、黄疸を伴い、通常、高窒素血症、出血、貧血、意識障害、そして持続的な発熱をきたします。
4. 診断
上記の症状がある場合は速やかに医療機関の診断を受けて下さい。
診断は病原体の証明,または血清テスト陽性により確定します。
白血球数はたいていの症例で正常かわずかに増加する程度です。白血球増加症 15,000/ μ L 以上は肝臓が侵されていることを示します。黄疸のある患者では貧血が起こります。
5. 予防と治療
抗生物質が有効です。また、暴露期間中にドキシサイクリン 200mg を週 1 回経口投与すると予防になります。患者の隔離は必要ありませんが、尿の処理には注意が必要です。補液や電解質療法を含めた支持療法も重症例には必要です。
レプトスピラ症の流行地域では不用意に水に入らないこと、特に洪水が発生した地域では注意が必要です。また、生野菜や飲料水にも十分注意して下さい。