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平成22年03月18日

 

草の根・人間の安全保障無償資金協力

西ネグロス州における職業訓練施設建設計画

贈与契約署名式

 

 

 

 

3月18日、桂誠駐フィリピン大使は、日本大使館において、被供与団体であるNGO「 パグ・イヌプダナイ 」の テオドリコ・ペニャ事務局長 との間で、標記案件に係る贈与契約に署名しました。

資金供与額は、 95,331米ドル(約900万円) です。

 

(案件概要)

フィリピン中部ビサヤ地方のネグロス島は、別名「砂糖の島」と呼ばれるほど砂糖産業が盛んな地域です。島内には15の製糖工場があり、フィリピン国内で生産される砂糖の約6割がネグロス島で生産されています。一方、同島の西部に位置し、約210万の人口を有する西ネグロス州では農地改革が進んでいないため、大地主が所有するサトウキビ農園に雇われて低賃金で働く農業労働者が多く、こうした労働者の月収は1,500-3,000ペソ程度(約3,000~6,000円)に止まっています。こうした社会的背景の中で、貧しい家庭では、子どもを働きに出すこともあり、いわゆる「児童労働」として社会問題となっています。ネグロス島では、約14万人の未成年者が砂糖産業に従事していると言われており、低賃金且つ長時間という過酷な条件下での労働を強いられています。

 

現地NGOである「パグ・イヌプダナイ」(現地語で「共に」を意味する)は、7年前から砂糖産業に従事する未成年者やその家族に対する支援を実施しています。農業に従事する未成年者の教育水準は極めて低いため、「パグ・イヌプダナイ」は、こうした未成年者のための非公式教育を実施しています。子どもたちは、非公式教育を受けつつフィリピン教育省認定の試験に合格すると、初等教育又は中等教育の修了証書が得られるため、こうした子どもたちへの非公式教育は将来的な道筋として非常に重要な手段であると言えます。一方、砂糖産業以外の職業に就くためには、専門の技術訓練を受ける必要があるため、「パグ・イヌプダナイ」は、15歳以上の若者を対象に小規模ながら地域のコミュニティセンター等で職業技術訓練を実施してきました。しかし、自前の施設を有しないため、十分な指導を行うことが難しい状況です。

 

 本件事業では、西ネグロス州のシライ市に「パグ・イヌプダナイ」が職業訓練を実施するための施設を建設します。訓練の対象となるのは、 同州の最貧困地域であるシプライ市、カンドニ町、トボソ町の3地域に居住し、サトウキビ農園で働く15 - 18歳の若者(約420名)及びその母親(約100名)であり、これら対象者が、食品加工、溶接、大工、服飾、コンピューター操作といった分野に関する訓練を受けます。これらの職業訓練を通じて、こうした社会的弱者の所得が向上することが期待されます。

 

このような貧しい人々の所得向上に資する支援を含んだ草の根・人間の安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは1989年から現在に至るまでの間に、計441件の事業を実施してきています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来より積極的に取り組んできており、本事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。

 

(c) Embassy of Japan in the Philippines