
2月20日、卜部敏直駐フィリピン大使は、日本大使館において、「(特活)オックスファム・ジャパン」の高橋聖子プログラム・オフィサーとの間で、本件事業の贈与契約に署名しました。
資金供与額は、399,263米ドル(約3,550万円)です。
(案件概要)
近年、ミンダナオ島中部では、雨期の開始が例年よりも遅くなったり、乾期でも降雨が続いたりと気候変動の影響と見られる異常気象が毎年のように繰り返されています。こうした異常気象に伴う干ばつや洪水は農業に深刻な影響を与えており、本件事業の実施地であるラナオ・デル・スール州のバラバガン町及びスルタン・クダラット州のエスペランザ町でも、ここ15年間、主要農作物の収穫量が減少しています。
バラバガン町の主要産品はキャッサバです。キャッサバは乾燥させた方が市場で高く取引されるため、町の農家は、収穫したキャッサバを天日乾燥させています。キャッサバは水分を多く含んでいるため、乾燥に時間がかかりますが、近年は乾期でも突然降雨があるため、計画通り乾燥させることが難しくなっています。結果として、農家は卸売業者に契約で規定された量の納品ができず、農家の収入も減少しています。こうした事態に対処するため、本件事業では、キャッサバ乾燥機を付属させた倉庫を町の6か所に建設します。また、各地区の農家が共同で使用するキャッサバ粉末化機1台も整備します。
エスペランザ町の主要産品はコメとトウモロコシです。同町でも高値での取引及び長期保存ができるように、多くの農家が穀物の天日乾燥を行っていますが、施設の数が限られています。道路で乾燥させることもありますが、衛生状態を保つのが困難であり、穀物が劣化する場合があります。また、同町ではコンクリート化された用水路が限られており、土に溝を付けただけの用水路が使用されています。こうした用水路では、途中で水が土に吸収されてしまうため、下流の水田にまで水を行き渡らせることができません。以上を踏まえ、同町では、コメとトウモロコシの収穫後の天日干しを行う施設と倉庫を町内の3か所に設置します。また、水田を走る主要な用水路約1キロメートルのコンクリート化を行います。
本件事業によって、エスペランザ町では穀物の収穫量が増え、また、2町において、収穫後の損失が減少し、作物に付加価値がつけられるようになります。これによって、農作物の市場へのアクセスが向上し、農家の収入が増えることが期待されます。事業ではまた、施設を適切に維持管理できるよう、農家を対象としたトレーニングも実施します。
日本NGOによる途上国での開発事業を支援する日本NGO連携無償は、2002年から開始されました。フィリピンでは、現在までに計28件の事業を支援してきており、支援総額は約3億7千万円に上っています。 本件事業は我が国とフィリピンとの間の戦略的パートナーシップを更に強化することにも資するものです。