1 3月26日,フィリピン外務省において,日本側石川和秀大使とフィリピン側アルバート・デル・ロサリオ外務大臣(H.E. Albert F. Del Rosario, Secretary of Foreign Affairs)との間で,総額195億500万円を供与限度額とする円借款2件及び総額18億9,600万円を供与限度額とする無償資金協力4件に関する書簡の交換が行われました。また,同日,日本側丹羽JICAフィリピン事務所長とフィリピン側プリシマ財務大臣との間で,上記円借款2件に係る借款契約の締結が行われました。上記円借款2件になお,上記円借款2件は,平成26年11月の日・フィリピン首脳会談において安倍総理大臣からアキノ大統領に対して供与を表明したものです。
2 対象案件の概要,期待される効果等は以下のとおりです。
(1)円借款
ア メトロマニラ立体交差建設計画Ⅵ(供与限度額:79億2,900万円)
マニラ首都圏の交通渋滞が著しい幹線の交差点において,立体交差を建設することにより,交通渋滞の緩和を図り,マニラ首都圏の輸送効率の向上,都市環境改善及び投資促進を通じた持続的経済発展に寄与するものです。
具体的にはマニラ首都圏の幹線4地点の交差点にかかるフライオーバー,アンダーパス及びアプローチ道路の整備が行われる予定です。
イ 洪水リスク管理計画(カガヤン・デ・オロ川)(供与限度額:115億7,600万円)
ミンダナオ島北部のカガヤン・デ・オロ川流域を対象として洪水対策(構造物/非構造物)を実施することにより,同地域の洪水被害の軽減を図り,同地域の脆弱性の克服,生活・生産基盤の安定・強化及び持続的経済発展に寄与するものです。
具体的には堤防及び洪水擁壁の建設,橋梁の改良,避難道路のかさ上げ,広報・住民啓発等が行われる予定です。
ウ 供与条件
事業名 金利 償還(据置)期間 調達条件
・メトロマニラ立体交差建設計画Ⅵ 0.1% 40(10)年 日本タイド
・洪水リスク管理計画(カガヤン・デ・オロ川) 0.3% 40(10)年 アンタイド
(2)無償資金協力
ア ミンダナオの紛争影響地域におけるコミュニティ開発計画(供与限度額:11億1,700万円)
ミンダナオ紛争影響地域において,農村から市場等へのアクセス道路及び橋梁の整備を行うことにより,農業開発の促進を通じ住民の生活改善や生計の向上を図り,対象地域の貧困削減と和平の定着に寄与するものです。日本政府はミンダナオの和平と開発に積極的に貢献しており,本事業はJ-BIRD(Japan-Bangsamoro Initiatives for Reconstruction and Development)の一環です。
イ イフガオ州小水力発電計画(供与限度額:9億2,200万円)
ルソン島北部のイフガオ州において,820kW程度の規模の小水力発電所を整備するものです。本案件の実施により,国産の再生可能エネルギー利用が促進され,地域の観光資源である棚田の保全及び温室効果ガス排出量の削減に寄与することが期待されます。
なお,本件は,関連する導水路建設サイトの追加工事を行うため,平成25年3月に交換公文(E/N)締結済みの供与限度額(8億9,300万円)を,9億2,200万円に変更するものです。
ウ 中小企業を活用したノン・プロジェクト無償(供与額:2億5,000万円)
フィリピン政府が進めている脆弱性克服のための各種施策を実施する上で必要とされる機材を購入するための資金を供与するものです。これにより,同国の経済社会開発努力の促進に貢献するとともに,我が国の中小企業が生産した製品を調達することにより,我が国の中小企業の同国への展開の足がかりになることが期待されます。
具体的な購入物品については,今後日・フィリピン間で協議の上決定される予定ですが,気象や河川の状態の観測に関する計器類や防災関連機材等,いずれも我が国企業の高い技術を活かした製品を供与することが見込まれます。
エ 防災機材ノン・プロジェクト無償(供与額:5億円)
我が国の知見・すぐれた技術を活用した防災機材を自然災害に脆弱なフィリピンに対し供与するものです。なお,本件では我が国で生産される機材・製品等を供与することで,経済社会開発を支援するのみならず,同機材・製品等に対する認知度の向上を図り,継続的な需要を創出し,地域経済の活性化に貢献します。
具体的な購入物品については,今後日・フィリピン間で協議の上決定される予定ですが,災害時に活用が期待される通信設備や輸送設備等の供与が見込まれます。
3 上記2(1)ア及び2(2)イは,経済発展を支えるインフラ整備という観点から,2(1)イ及び2(2)ウ,エの案件は,災害多発国であるフィリピンの脆弱性を克服し生活基盤の安定を図るという観点から,2(2)アは,ミンダナオの和平と開発への貢献という観点から,それぞれフィリピン政府が「フィリピン開発計画 2011-2016」において掲げる「包摂的成長」に向けたフィリピン政府の努力を支援するものです。 また,2(2)イは,気候変動の緩和にも資する案件です。
これらの事業は,我が国とフィリピンとの友好協力関係を更に増進し,また両国間の戦略的パートナーシップを更に強化することにも資するものです。
(参考)
・案件所在図
・日・フィリピン首脳会談(平成26年11月12日,於:ミャンマー)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/s_sa/sea2/ph/page3_001010.html
・第3回国連防災世界会議(平成27年3月14日~18日,於:仙台)
http://www.mofa.go.jp/mofaj/ic/gic/page3_001128.html
・JICAフィリピン事務所
http://www.jica.go.jp/philippine/office/index.html