3月26日、石川和秀駐フィリピン大使は、日本大使館において、被供与団体であるイラワン代表(Mr. Benjamin Abadiano)との間で、標記案件に係る贈与契約に署名しました。 資金供与額は、87,081米ドル(約1,000万円) です。
(案件概要)
ミンドロ島東部のオリエンタル・ミンドロ州内にあるナウハン町の人口は約5000人であり、その98%はマンヤン族を含めた先住民族です。先住民族は山岳部に居住しており、ビジネス機会が乏しい状況下にあります。2009年に行われた国連開発計画(UNDP)やアッシシ財団の統計によればマンヤン族の平均月収は1,000~2,000ペソと推計されています。適正な教育を受けることができず、雇用獲得の手段が乏しいことが貧困の一因となっています。
本案件では、これらの先住民族を対象とした学習施設に能力開発施設を建設し、併せて同施設に必要な机・イスなどの備品を提供します。本事業を通じて、先住民族の知識及び技術の向上を図ることで、雇用獲得の機会をつくることが見込まれます。そして、3790名の先住民族が、リーダーシップ、先住民族の文化と教育、農業生産、技能育成スキル等の研修を受けることが期待されています。
(被供与団体概要)
被供与団体であるイラワンは、先住民族の自立支援を使命として2001年に設立されたNGOであり、フィリピン各地の先住民族支援活動に長年従事してきた役員及びメンバーによって構成されています。同団体は、先住民族の文化統合のための人権の尊重や向上、地球環境や資源を守るための能力や土地の所有権、人間開発、民族自決、平和や正義に焦点を当てた活動を展開しています。また、活動を実施するために、国際NGOホープ・インターナショナル開発機構、公益信託アジア・コミュニティ・トラスト、国連開発計画など地域機関や国際機関とも連携しています。2006年には、日本政府の援助のもとミンダナオ島の先住民族に小学校を設立しました。そして今、同校の卒業生たちにより他の先住民族のコミュニティや組織を支援する活動が広がっています。
(草の根・人間安全保障無償資金協力)
草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは1989年から現在に至るまでの間に、計512件の事業を実施してきています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来より積極的に取り組んでおり、本件事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。