3月24日、石川和秀駐フィリピン大使は、マニラ首都圏のホテルにおいて、被供与団体であるモラブ町リーサル多目的協同組合の組合長(Mr. Arthur Quilalang) との間で、標記案件に係る贈与契約に署名しました。 資金供与額は、65,333米ドル(約780万円) です。
(案件概要)
本案件では、モラブ町リーサル多目的協同組合に対して、農産物輸送用のトラック2台を整備することで、農産物の輸送に係るコストを50%低減して農家の収入の向上を図ります。この事業を通じて、814名の農家が裨益します。
モラブ町リーサル多目的協同組合員の多くは米農家であり、種、肥料、農薬等の生産コストの高騰及び収穫後の輸送コストの高騰により、貧困に喘いでいます。農家は、生産した米を共同倉庫や市場に運ぶ手段を有していないため、仲介人のトラックを利用しており、その賃料は農家にとって大きな負担となっていました。
(被供与団体概要)
同組合のあるモラブ町は、ミンダナオ島ザンボアンガ州東部に位置し、25のバランガイから成る人口およそ4万9千人の自治体です。同町は、ザンボアンガ・デル・スール州の中でも貧しい自治体のひとつであり、貧困率は44%です。同町の90%以上にあたる約2万ヘクタールが農地として利用されており、農業以外に産業はありません。主要作物は米で、その他トウモロコシ、ココナッツ、キャッサバ、バナナ、サツマイモ等がセブを含む近郊の町に出荷されています。
長年、同組合は、組合員の生計向上を図り、家畜・家禽の飼育及び有機農作物、米等の生産に関する技術研修を実施し、農業における幅広いビジネス展開を支援してきました。また、生産技術、生計、起業等に対する技能訓練を受けた組合員によって構成された同組合は、医科・歯科事業においてもコミュニティ発展のための活動に従事してきました。
同組合の支援は組合員にとって有意義なものではありますが、農家の収入は未だ低く、農業環境の改善は課題となっていました。農家の収益向上のためには農作物輸送コストの削減が不可欠であり、同組合は、草の根無償資金協力支援による農作物輸送環境の改善に期待しています。
(草の根・人間安全保障無償資金協力)
草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは1989年から現在に至るまでの間に、計505件の事業を実施してきています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来より積極的に取り組んでおり、本件事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。