3月15日、石川和秀駐フィリピン大使は、ミンダナオ島マギンダナオ州スルタン・クダラット町において、草の根・人間の安全保障無償資金協力事業として実施された「青少年訓練センター整備計画」の引渡式に出席しました。同式典には、ムラド・モロ・イスラム解放戦線(以下、MILF)議長などの関係者が出席しました。
ミンダナオ地方は、これまでの政府とMILFの和平交渉において、政府及びMILF双方から、「正常化」が同地域の平和と安定の成否の鍵を握る重要な課題と認識されています。特に、事業実施地域は、長年の紛争により疲弊しており、社会基盤の整備も取り残されてきたことから、全人口の3割に当たる約4万人が貧困ライン以下の生活を強いられています。
本件事業は、J-BIRD(注)の一環として、バンサモロ新自治政府設立に向け、紛争の影響で学校教育を受ける機会を逸した青少年や、元MILF等の兵士が再度銃を手にする必要に迫られることがないよう、職業訓練施設及び当該施設に必要な機材を整備するものであり、2013年度に当館より121,905米ドル(約1,300万円)が供与されました。整備された施設は、訓練生30名を収容可能とし、配管・配線・配電工などに関する職能訓練が実施され、毎年約170名の青少年が裨益します。
このプロジェクトが、ミンダナオ地方の「正常化」を一層促進し、同地域の将来の平和と安定に寄与することを期待しています。
なお、草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは、1989年から現在に至るまでの間に、計518件の事業を実施いたしました。
(注)我が国は、2006年よりミンダナオ和平支援案件をJ-BIRD (Japan-Bangsamoro Initiative for Reconstruction and Development)と総称し、元紛争地域に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力など経済協力プロジェクトを集中的に実施しており、その総額はこれまで2億ドル以上になります。本年6月には、アキノ大統領の国賓訪日の際の日比首脳会談において、安倍総理大臣は、ミンダナオの永続的な和平について、フィリピンの取組への支持を表明するとともに、我が国は新自治政府設立を念頭にJ-BIRDⅡの支援を進める旨述べました。J-BIRDⅡとは、バンサモロ地域の経済的自立の確保に一層焦点を当ててJ-BIRDを新たなフェーズで進めるものです。
(了)