4月26日、植野篤志在フィリピン日本国大使館次席公使は、ミンダナオ島コタバト市にあるコタバト地域医療センターにおいて、草の根・人間の安全保障無償資金協力事業として実施された「助産施設医療機器・機材整備計画」の引渡式に出席しました。同式典には、ヤコブ・バンサモロ開発局事務局長を始めとして、サヌスィ・ミンダナオ和平国際監視団副団長、ヤンバオ・コタバト地域医療センター長などの関係者が出席しました。
コタバト地域医療センターは、ミンダナオ島の中でも高度医療を提供する医療機関の一つであり、地域の中核をなす医療施設として重要な役割を果たしています。同センターでは、助産施設が最も多くの患者を抱え、正常分娩数は毎年4,000例前後を数えるものの、医療機器・機材の不足や老朽化に伴い、その約1割(400例)はストレッチャーでの分娩を余儀なくされる状況です。
本件事業は、J-BIRD(注)の一環として、コタバト市を中心とした同地域の周産期医療体制を強化し、劣悪な環境下での医療行為や施設分娩が改善されるよう、同センターに診療に必要な医療機器・機材を整備するものであり、2014年度に当館より102,138米ドル(約990万円)が供与されました。このプロジェクトが、同地域の安全で安心な医療の向上につながるとともに、さらには日本とフィリピンの戦略的パートナーの強化に寄与することを願っています。
なお、草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは、1989年から現在に至るまでの間に、計519件の事業を実施いたしました。
(注)我が国は、2006年よりミンダナオ和平支援案件をJ-BIRD (Japan-Bangsamoro Initiative for Reconstruction and Development)と総称し、元紛争地域に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力など経済協力プロジェクトを集中的に実施しており、その総額はこれまで2億ドル以上になります。2015年6月には、アキノ大統領の国賓訪日の際の日比首脳会談において、安倍総理大臣は、ミンダナオの永続的な和平について、フィリピンの取組への支持を表明するとともに、我が国は新自治政府設立を念頭にJ-BIRDⅡの支援を進める旨述べました。J-BIRDⅡとは、バンサモロ地域の経済的自立の確保に一層焦点を当ててJ-BIRDを新たなフェーズで進めるものです。
(了)