令和元年草の根・人間の安全保障無償資金協力合同贈与契約署名式

令和元年11月26日

11月22日、羽田浩二駐フィリピン大使は、在フィリピン日本国大使館において、今年度の草の根・人間の安全保障無償資金協力(注1)5案件について、各被供与団体との間で、贈与契約に署名しました。署名式には、教育省パスクワ次官、保健省国際医療協力局スディアカル氏及び関係者が出席しました。

今回署名が行なわれた5案件の総額は590,781米ドル(約6,500万円)であり、学生寮、診療所、学校教室の建設並びに医療機材、農業機械等の整備に充てられます。

1.『パサイ市におけるフィリピン国立ろう学校の学生寮整備計画』
・被供与団体:フィリピン国立ろう学校
・資金供与額:156,127米ドル

    フィリピン国立ろう学校は、国内で唯一幼稚園から高校までのクラスを開設する聴覚に障がいを持った子どものための学校であり、本学校にはマニラ首都圏だけでなく全国各地出身の子どもたちが集まっています。入学者の増加に伴い入寮希望者数も増加しているのに対して、所有する寮の収容人数が追い付かず、安全な学習環境を提供できていないことが課題となっています。本事業は、同校の施設内に年間70名収容可能な2階建ての寮を整備するものであり、校内における安全な住環境の提供を通じて、生徒が安心して学業に励む支援をするものです。

 
    

2.『マウンテンプロビンス州パラセリス町パリトット村における診療所整備計画』
・被供与団体:パラセリス町
・資金供与額:80,927米ドル

    マウンテンプロビンス州パラセリス町は、十分な医療設備の整った診療所の数が不足していることから、住民に適切な保健医療サービスを提供できていないことが課題になっています。保健医療サービスへのアクセスが困難なため、自宅出産を選択する妊婦も多くいます。本事業は、出産施設を備えた町立診療所の建設を行うものです。本事業実施により、年間約200人の分娩が必要な妊婦を含む約1万2千人の住民が、安全で適切な保健医療サービスを受けられるようになります。

 


3.『西ネグロス州ラ・カステリアナ町ドン・フェリックス小学校における教室整備計画』
・被供与団体:ラ・カステリアナ町
・資金供与額:81,122米ドル

西ネグロス州ラ・カステリアナ町のドン・フェリックス小学校は、雨季には雨水が教室内に侵入し授業の中断を余儀なくされるほど一部の施設が老朽化していることに加え、教室の数も不足しており、子どもたちに適切な学習環境を提供できていないことが課題となっています。本事業は、ドン・フェリックス小学校の施設内に1校舎4教室、トイレ・手洗い設備8個、関連備品を整備することにより、学習環境及び衛生環境の改善を図り、もって同校に通う生徒1,827名の教育の質の向上及び健康的な育成促進に寄与するものです。

 
   

4.『北コタバト州キダパワン市セント・ニーニョ小学校における教室整備計画』
・被供与団体:キダパワン市
・資金供与額:183,563米ドル

北コタバト州キダパワン市セント・ニーニョ小学校では、教室不足及び老朽化した建物内で子どもたちが学習しており、適切な学習環境を提供できていないことが課題となっています。同校の教室施設は、築61年経過しており、地震により壁にヒビが入っていて危険な状態となっています。また、雨が降ると天井及び窓周辺から雨水が侵入し授業の中断を余儀なくされることもあります。本事業は、J-BIRDの一環として(注2)、2階建て4教室の校舎(トイレ・手洗い設備4ヵ所を含む)を整備し、同校の生徒216名に対し安全で適切な学習環境を提供するものです。

    
 
 
5.『タルラック州アナオ町における農業機材整備計画』
・被供与団体:アナオ市
・資金供与額:89,042米ドル

タルラック州アナオ町の主要産業は農業で、コメとトウモロコシが主要農作物です。同町では、多くの住民が農業に生計を頼っているものの、農業機材が整備されていないことにより、耕起作業や収穫作業などの農作業が効率的に行われておらず、生産コストが割高になり、収穫ロスも多くなっていることが課題となっています。本事業は、トラクター1台、ディスクハロー1基、ロータリー1基、穀物収穫機1台(コメ収穫用)、とうもろこし収穫用キット1基及び穀物収穫機を運搬するトレーラー1台を整備するものです。本事業実施により、農作業の効率化、生産コスト及び収穫ロスの削減が図られ、同町の259農家の収入向上、生計改善に貢献することが期待されています。

 



※草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、フィリピンでは1989年から現在に至るまでの間に計548件(上記5件を含む)の事業を実施しています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来積極的に取り組んでおり、本件事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。

※我が国は、2006年よりミンダナオ和平支援案件をJ-BIRD (Japan-Bangsamoro Initiative for Reconstruction and Development)と総称し、元紛争地域に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力など経済協力プロジェクトを集中的に実施しており、その総額はこれまで200億円以上になります。2015年6月、アキノ元大統領の国賓訪日の際の日比首脳会談において、安倍総理大臣は、ミンダナオの永続的な和平について、フィリピンの取組への支持を表明するとともに、我が国は新自治政府設立を念頭にJ-BIRDIIの支援を進める旨述べました。J-BIRDIIとは、バンサモロ地域の経済的自立の確保に一層焦点を当ててJ-BIRDを新たなフェーズで進めるものです。