【領事班からのお知らせ】(感染症広域情報)の発出:ポリオの発生状況(ポリオ発生国に渡航する際は、追加の予防接種をご検討ください。)(その14)

令和2年9月1日
【ポイント】
●8月25日、世界保健機関(WHO)はアフリカで野生型由来のポリオが根絶されたと宣言しました。
●他方、WHOは、6月の緊急委員会において、ポリオウイルスの国際的な広がりについて「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC)」の延長勧告をしています。
●ポリオ発生国(アフガニスタン、パキスタン、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、中国、コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、マリ、ニジェール、ナイジェリア、ソマリア、トーゴ、ザンビア)に渡航する人は、追加の予防接種を検討してください。
 
【本文】
1 アフリカにおける野生型ポリオウイルスの根絶
 8月25日、世界保健機構(WHO)は、アフリカ地域における野生型由来のポリオウイルスの根絶に成功したと正式に宣言しました。
 WHOによれば、アフリカ地域で4年間、野生型ポリオウイルスが報告されておらず、同地域における野生型ポリオウイルスの最後の症例は、ナイジェリアで2016年に検出されたものが最後になります。これで野生型のポリオが残っているのはアフガニスタンとパキスタンの2カ国となります。
アフリカ地域からの野生型ポリオウイルスの根絶は大きな成果ですが、現在、この地域の16カ国(アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、コンゴ(民)、エチオピア、ギニア、ガーナ、マリ、ニジェール、ナイジェリア、トーゴ、ザンビア)が伝播型ワクチン由来ポリオウイルス2型(cVDPV2)の流行を経験しており、予防接種の少ない地域で同ウイルスが発生する可能性があるとも言及しており、引き続き注意が必要です。
 
(WHO発表(英文))
https://www.afro.who.int/news/africa-eradicates-wild-poliovirus
 
2 ポリオの発生状況
(1)世界保健機関(WHO)は、2014年5月5日、ポリオウイルスの国際的な広がりが、「国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態(PHEIC、Public Health Emergency of International Concern)」であることを宣言しました。2020年6月23日、国際保健規則(IHR)緊急委員会の第25回会合を開催し、その結果として、現在の状況が引き続きPHEICに該当するとの見解を示すとともに、各国の発生状況を次のカテゴリーに区分して評価しています。
 
○「ポリオウイルス(野生型、ワクチン1型又は3型由来)の感染があり、国際的に感染を拡大させるリスクがある国」
-野生型
アフガニスタン、パキスタン
-ワクチン1型
マレーシア、ミャンマー、フィリピン
○「ポリオウイルス(ワクチン2型由来)の感染があり、国際的に感染を拡大させるリスクがある国」
アフガニスタン、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、中国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、マレーシア、マリ、ニジェール、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、ソマリア、トーゴ、ザンビア
○「もはやポリオウイルス(野生型又はワクチン由来)の感染はないが、野生型又はワクチン由来の再感染に対して影響を受けやすい国」
モザンビーク、パプアニューギニア、インドネシア
 
(WHO発表(英文))
https://www.who.int/news-room/detail/23-06-2020-statement-of-the-25th-polio-ihr-emergency-committee
 
(2)WHOは以上に加え、野生型ポリオウイルス及びワクチン由来型ポリオウイルスについて次のとおり発表しています。
 
○野生型
2019年に始まった野生型ポリオの症例数増加は、2020年にかけて継続し、世界的に大きな懸念を残した。本年、2020年6月16日時点で70件の野生型ポリオの症例数が報告されており2019年の同時期の57件に対して上昇傾向を逆転させることが出来ていない。(※6月時点の評価。上記1のとおり、アフリカ地域においては根絶を表明している。)
委員会は、野生型ポリオの配列の結果に基づくと、パキスタンからアフガニスタン、アフガニスタンからパキスタンへのウイルスの国際的な広がりが最近の症例にあったと指摘した。二国間の野生型ポリオの国際的な広がりの頻度と、定期的な予防接種とポリオ予防活動をおこなっている他の国々における脆弱性の増加は、コロナウイルス(COVID-19)の大流行によって、共に悪影響を受けており、これらは2014年以来最高レベルにある国際的な広がりのリスクの可能性を示唆する2つの主要な要因である。また、国境閉鎖とロックダウンの効力は、短期的にはリスクを軽減する可能性はあるが、通常の人の往来再開とワクチン接種中断による免疫の低下によって、長期的にはこれを上回るだろう。
 
○ワクチン由来型
WHOによる4つの地域区分(アフリカ地域、東地中海地域、東南アジア地域、西太平洋地域)で複数のワクチン由来によるポリオウイルス感染症例が報告されていることが非常に懸念されており、前回の緊急委員会から新たな国1カ国において流行しているとの報告があった。歴史的経験とは異なり、近年の広がりとともに(チャド及び中央アフリカからカメルーン、ナイジェリア、トーゴ及びガーナからコートジボワール、ナイジェリアからベナン、ガーナからブルキナファソ、ナイジェリアからマリ、トーゴからニジェール、ガーナ及びベナンからトーゴ、アンゴラからコンゴ民主共和国、パキスタンからアフガニスタン)、ワクチン2型の国際的な蔓延は非常に一般的になっている。さらに、最近、エチオピアで一価経口ポリオワクチン2型(mOPV2)の使用に起因する新しい局所的な発生が起きている。
 
(WHO発表(英文))
https://www.who.int/news-room/detail/23-06-2020-statement-of-the-25th-polio-ihr-emergency-committee
 
(3)パキスタン政府は、WHOの緊急勧告に伴い、同国に4週間以上滞在する外国人を含めた全ての人にポリオ予防接種を義務化しており、WHOが推奨する国際予防接種証明書にて摂取の記録を確認しています。
(4)アフガニスタン出入国時には、国際予防接種証明書の所持が求められることがあり、所持していない場合は、空港で予防接種を受けなければならないことがありますので、最新の情報は在アフガニスタン日本国大使館にお問い合わせください。
(5)以上を踏まえ、ポリオ発生国(アフガニスタン、パキスタン、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、アンゴラ、ベナン、ブルキナファソ、カメルーン、中央アフリカ、チャド、コートジボワール、中国、コンゴ民主共和国、エチオピア、ガーナ、マリ、ニジェール、ナイジェリア、ソマリア、トーゴ、ザンビア)への渡航を予定している方及び現地に滞在している方は、以下3を参考にポリオの予防接種を検討してください。特に、現在ポリオウイルス感染者の発生が報告されている地域に渡航する場合は、以前に予防接種を受けていても、追加接種をご検討ください。現地の小児定期予防接種一覧、医療機関情報等については、渡航・滞在先の在外公館のホームページをご参照ください。
(参考)
厚生労働省ホームページ:ポリオ(急性灰白髄炎)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/polio/
厚生労働省検疫所FORTHホームページ:海外渡航のためのワクチン
https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html
 
3 ポリオについて
(1)感染源
ポリオ(急性灰白髄炎)は、感染者(特に小児)の糞便又は咽頭分泌液との直接接触等によってポリオウイルスが人の口の中に入り、腸の中で増えることで感染します。増えたポリオウイルスが再び便の中に排泄されて、この便を介してさらに他の人に感染します。まれに汚染された水や食物などからも感染します。成人が感染することもありますが、主に小児で起こります。
(2)症状
潜伏期間は3~21日(通常は7~21日)、感染しても90%~95%は無症状(不顕性感染)です。4~8%は軽症であり、発熱、風邪のような症状や胃腸症状(咽頭痛、咳、発汗、下痢、便秘、悪心など)が見られます。また、感染者の1~2%は、頭痛、嘔気、嘔吐、頸部及び背部硬直などの髄膜刺激症状を呈します。感染者の0.1~2%が典型的な麻痺型ポリオとなり、1~2日の風邪のような症状の後、解熱に前後して急性の筋肉、特に下肢の麻痺(急性弛緩性麻痺)が起きることが多いです。発症から12か月過ぎても麻痺又は筋力低下が残る症例では、永続的に後遺症が残る可能性があります。
(3)治療
麻痺の進行を止めるための治療や、麻痺を回復させるための治療が試みられてきましたが、現在、特効薬などの確実な治療法はありません。麻痺に対しては、残された機能を最大限に活用するためのリハビリテーションが行われます。
(4)予防
ア 予防接種
日本の定期の予防接種では、平成24年8月までは経口生ワクチンが使用されていましたが、平成24年9月以降は注射の不活化ポリオワクチンが使用されています。ポリオが発生している国に渡航する人は、追加の予防接種を検討してください。
なお、生ポリオワクチンを接種した場合、ワクチンウイルスが体外に排泄されるため、極めてまれではありますが、接種後便中に排泄されるワクチンウイルスから免疫のない子供や大人に感染し、麻痺をおこすこともありますので、接種後の衛生管理にも注意してください。ただし、日本国内で主に用いられている不活化ポリオワクチン接種(注射によるもの)では、基本的にこのようなことが起こることはないとされています。
イ 感染予防
ポリオの流行地では以下のような感染予防対策を心がけ、感染が疑われる場合には、直ちに医師の診察を受けてください。
●こまめに石けんと水で手洗いし、特に飲食の前、トイレの後は念入りに手洗いを励行する。
●野菜や果物は安全な水で洗い、食物は十分加熱してから食べる。
●乳製品は殺菌処理されたもののみ飲食する。
●飲料水や調理用の水はミネラルウォーターを使用する。水道水を利用する場合は、一度十分に沸騰させた後使用する。安全な水から作ったと確認できる氷以外は使用しない。
(5)予防接種証明書
ア 国内での予防接種証明書
国内での予防接種証明書の取得については、予防接種を実施した医療機関にご相談ください。
イ 海外での予防接種証明書
海外での同証明書の取得については、渡航先の日本国大使館にご照会ください。
 
4 新型コロナウイルス感染症
 新型コロナウイルス感染症の流行をふまえ、世界全域に感染症危険情報が発出されていますので、引き続き最新情報の収集と感染予防に万全を期してください。
 
5 在留届及び「たびレジ」への登録のお願い
 海外渡航前には、万一に備え、家族や友人、職場等に日程や渡航先での連絡先を伝えておくようにしてください。3か月以上滞在する方は、緊急事態に備え、必ず在留届を提出してください。
http://www.mofa.go.jp/mofaj/toko/todoke/zairyu/index.html
また、3か月未満の旅行や出張などの際には、海外滞在中も安全に関する情報を随時受けとれるよう、外務省海外旅行登録「たびレジ」に登録してください。(詳細はhttps://www.ezairyu.mofa.go.jp/tabireg/#参照)
 
(問い合わせ窓口)
○外務省領事サービスセンター
  住所:東京都千代田区霞が関2-2-1
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)2902、2903
 
(外務省関連課室連絡先)
○外務省領事局政策課(海外医療情報)
  電話:(代表)03-3580-3311(内線)4475
○外務省 海外安全ホームページ: http://www.anzen.mofa.go.jp/
        (携帯版)  http://m.anzen.mofa.go.jp/mbtop.asp
 
(現地在外公館連絡先)
○在フィリピン日本国大使館  
 住所:2627 Roxas Boulevard, Pasay City,Metro Manila  
 電話:(市外局番02)8551-5710  
 (邦人援護ホットライン)(市外局番02)8551-5786  
 FAX:(市外局番02)8551-5785  
 ホームページ: http://www.ph.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html 
 
○在ダバオ日本国総領事館   
 住所:4th Floor, B.I. Zone Building, J.P. Laurel Avenue, Bajada, Davao City 8000 
 電話:(市外局番082)221-3100 
 FAX:(市外局番082)221-2176 
 ホームページ:https://www.davao.ph.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html 
 
○在セブ領事事務所  
 住所:7th floor,Keppel Center,Samar Loop cor. Cardinal Rosales Ave.,Cebu Business Park,Cebu City  
 電話:(市外局番032)231-7321  
 FAX:(市外局番032)231-6843