草の根・人間の安全保障無償資金協力 「南コタバト州トゥピ町カブロン村給水システム整備計画」引渡式
令和4年7月21日



7月20日、南コタバト州トゥピ町において、平成30年度草の根・人間の安全保障無償資金協力事業として実施された「南コタバト州トゥピ町カブロン村給水システム整備計画」の引渡式が開催され、在ダバオ総領事館より石川義久総領事及び三橋副領事、また当館より山田三等書記官が出席しました。同式典には、レイナルド・タマヨ・ジュニア南コタバト州知事、ロメオ・タマヨトゥピ町長、南コタバト州政府関係者、トゥピ町関係者及び地域住民が出席しました。
本案兼採択当初、南コタバト州では給水システムの整備が行き届いておらず、安全な水への日常的アクセスが確保されていない住民が多数いる状況でした。特に同州の中でもトゥピ町は安全な水へのアクセス率が低く、同町カブロン村の一部の集落では、最寄りの水源まで徒歩で往復最大2時間を要していた上、その水も飲み水に適した品質ではなく、毎年人口の約1割が下痢や皮膚病など安全でない水を使用することに起因して健康を害している状況でした。
本問題の解決のため、本事業ではJ-BIRD注1の一環として、トゥピ町カブロン村の3集落において給水システムを整備することを目的に75,149米ドル(約840万円)注2を南コタバト州政府に供与しました。本事業により、対象集落の住民約1,000名が、きれいで安全な水を日常的に使えるようになり、それによって住民の健康や生活環境が改善されます。加えて、水の運搬に要する時間が大幅に削減されることによって、住民がより生産的な活動に時間を使うことが可能になり、貧困の削減が期待されます。
草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、我が国はフィリピンのトップドナーとして、1989年から現在に至るまでの間に、計553件の事業を実施してきています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来積極的に取り組んでおり、本事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。
注1)我が国は、2006年よりミンダナオ和平支援案件をJ-BIRD(Japan-Bangsamoro Initiative for Reconstruction and Development)と総称し、紛争影響地域に対する草の根・人間の安全保障無償資金協力など経済協力プロジェクトを集中的に実施しており、その総額はこれまで2億ドル以上になります。2015年6月には、アキノ前大統領の国賓訪日の際の日比首脳会談において、安倍前総理大臣は、ミンダナオの永続的な和平について、フィリピンの取組への支持を表明するとともに、我が国は新自治政府設立を念頭にJ-BIRDIIの支援を進める旨述べました。J-BIRD IIとは、バンサモロ地域の経済的自立の確保に一層焦点を当ててJ-BIRDを新たなフェーズで進めるものです。
注2)1ドル=112円(平成30年度支出官レート)