草の根・人間の安全保障無償資金協力 「パサイ市におけるフィリピン国立聾学校の学生寮整備計画」引渡式

令和4年10月28日
 
 

10月28日、マニラ首都圏パサイ市において、令和元年度草の根・人間の安全保障無償資金協力事業として実施された「パサイ市におけるフィリピン国立聾学校の学生寮整備計画」の引渡式が開催され、当館より二瓶経済公使、官野一等書記官及び山田三等書記官が出席しました。同式典には、クリストファー・ローレンス・アーヌコ教育省次官補、ボイェット・ディング・デル・ロザリオパサイ副市長、教育省関係者、パサイ市職員、及び同学校校長をはじめとする学校関係者が出席しました。
 
 

フィリピン国立聾学校は国内で唯一、幼稚園から高校までの一貫教育を提供している、聴覚障がい児のための公立学校です。その特殊性から同校には全国各地より応募があり、そのため同学校は学生のための寮施設を保有していますが、本案件実施前における同施設の収容可能人数は30名であり、毎年100名近くに及ぶ入寮希望者数に全く追いついていない状況でした。そのため入寮がかなわない生徒が一定数発生しており、それらの生徒は長距離通学を余儀なくされていました。フィリピンでは歩道や公共交通機関の整備が遅れており、さらに交通規則を守らない車両も依然として多く存在するのが現状であることから、長時間通学をする生徒は交通事故の危険にさらされており、同校は生徒にとって安全な学習環境を提供できていない状況でした。
 
 
 
 
本問題の解決のため、本事業では学生寮施設拡大を目的として、156,127米ドル(約1,720万円)注1をフィリピン国立聾学校に供与し、2階建ての寮を整備しました。本事業によって、年間約100人注2の学生・児童が学生寮に宿泊しながら安心して勉強に励むことができるようになります。加えて、生徒の保護者が通学にかけていた費用及び送迎にかけていた時間の負担を削減することができ、家庭の生計改善が期待されます。
 
草の根・人間安全保障無償資金協力は「人間の安全保障」の確保に資するものであり、我が国はフィリピンのトップドナーとして、1989年から現在に至るまでの間に、計553件の事業を実施してきています。こうした草の根レベルの支援についても我が国は従来積極的に取り組んでおり、本件事業は我が国とフィリピンとの戦略的パートナーシップを育むことにも寄与するものです。
 
注1)1ドル=110円(令和元年度支出官レート)
注2)既存寮を含む合計収容可能人数