「現地メディア向け『日本政府によるミンダナオ和平プロセス支援視察プレスツアー』を行いました」

令和6年3月27日
3月4日から6日、現地メディア向けに「日本政府によるミンダナオ和平プロセス支援視察プレスツアー」を実施しました。当地主要英字紙のフィリピンスター紙、マニラ・ブレティン紙、フィリピン・デイリー・インクワイアラー紙から記者が1名ずつ参加したほか、当地大手テレビ局GMAからレポーター1名、カメラマン1名、当地主要ラジオ局(DZRH)からはラジオパーソナリティ1名の計6名が参加しました。このプレスツアーは、日本のミンダナオ和平プロセス支援に関する開発協力が現地メディアで取り上げられる機会を増やすとともに、フィリピンの政府関係者、知識層およびフィリピン国民への情報発信を強化するためのものです。
 
プレス一行は、ミンダナオ島西部のバンサモロ・ムスリム・ミンダナオ自治地域(BARMM)の中心的都市であるコタバト市及びその周辺地域を訪れ、以下のODAプロジェクトの活動や成果についてブリーフィングを受けるとともに、現地関係者や受益者へのインタビューを行いました。
・「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト」(JICA技術協力)
・「イブン・タイミヤ財団学園の5教室建設計画」(平成20年度草の根・人間の安全保障無償資金協力)
・「BARMMにおける小規模農家及び漁民のための農業及び漁業バリューチェーン向上計画」(令和4年度国際機関連携無償(WFP))
・「バンサモロにおける食糧安全保障強化と生計向上支援」(令和4年度補正予算(UNDP))
・「退役戦闘員のための能力開発・職業訓練支援プロジェクト」(JICA技術協力)
・「バンサモロ暫定自治政府首相アドバイザー」(JICA専門家)
・「ミンダナオにおける持続的和平・治安維持メカニズム強化」(令和5年度補正予算(IOM))
 



1日目の様子
プレス一行はまず、JICAコタバト・プロジェクト事務所で「バンサモロ自治政府能力向上プロジェクト」の概要説明を受けた後、北マギンダナオ州スルタン・クダラット町にあるBARMM農業・漁業・農地改革省の研修・研究センターを訪れ、プロジェクトが実施する農民を対象とした農業技術研修を視察しました。研修講師や農民へのインタビューを行うとともに、プロジェクトの成果を示すデモ農園を見学し、プロジェクトの実践的な成果について理解を深めました。
その後、一行はイブン・タイミヤ財団学園に移り、草の根・人間の安全保障無償資金協力で建設された教室を見学しました。また同学園の創設者で、日本政府が実施した「2023年度イスラム学校教師招へい事業」の参加者でもあるオンブラ・イマーム博士にインタビューを行い、教育分野における日本の協力の成果についての洞察を得ました。
 
 

2日目の様子
プレスツアー2日目は、ミンダナオ島における日本のODAについてより理解を深めるため、コミュニティ開発を目的としたプロジェクトを訪問しました。
参加者はまず、国連世界食糧計画(WFP)と連携し、長期的な食糧安全保障とレジリエンスの向上を目指す「BARMMにおける小規模農家及び漁民のための農業及び漁業バリューチェーン向上計画」の活動地の一つ、、南マギンダナオ州ダトゥ・ピアン町を訪問しました。低湿地に位置する同町のレイナ・レジェンテ地区は、雨期には深さ約1メートルに達する洪水に見舞われます。WFPは日本政府の資金により、地域の人々に食糧を配布する代わりに労働力を供出してもらい、幹線道路と小学校をつなぐ通路のかさ上げ工事を行いました。この結果、生徒と教師は雨期でも水に浸かることなく安全に通学できるようになりました。同校はまた、プロジェクトによる支援で校庭に小さな菜園を設け、野菜を栽培しています。
次に、参加者は国連開発計画(UNDP)が日本政府の無償資金協力により実施している「バンサモロにおける食糧安全保障強化と生計向上支援」の活動視察のため、コタバト市タモンタカ5町ディオコラノ地区を訪問しました。このプロジェクトは、持続可能な平和のための食糧安全保障を確保しつつ、地域住民が昨今の食糧危機・価格インフレに対処できるよう支援することを目的としています。参加者は、生計向上のための農場建設用バックホーローダーの引き渡し式に立ち会うとともに、支援で整備された養鶏場を視察しました。
その後、一行は北マギンダナオ州スルタン・クダラット町に移動し、JICAの技術協力「退役戦闘員のための能力開発・職業訓練支援プロジェクト」の事務所を訪問しました。このプロジェクトは、退役戦闘員のニーズに合った新しい職業訓練コースを開発し、生計の機会を拡大することにより、元戦闘員が平和で生産的な市民として地域社会に貢献できるよう支援することを目的としています。
2日目の最後には、バンサモロ暫定自治政府首相のアドバイザーを務め、ミンダナオの平和構築プロセスにおける豊富な経験と貢献で知られる落合直之氏との意見交換が行われました。
 

3日目の様子
プレスツアー3日目(最終日)は、合同和平治安委員会(JPSC)事務局を訪問しました。国際移住機関(IOM)が日本政府の資金により同委員会と実施している「ミンダナオにおける持続的和平・治安維持メカニズム強化」について同委員会の共同議長から説明を受け、一行はこの地域における日本政府の平和構築の取り組みの多層性について学びました。
このプロジェクトは、フィリピン国軍(AFP)、フィリピン国家警察(PNP)及びモロ・イスラム解放戦線(MILF)の軍事部門であるバンサモロ・イスラム軍(BIAF)のメンバーで構成される平和維持部隊である「合同和平治安チーム(JPST)」を強化するため、JPST駐屯地の修復と要員の訓練を行うものです。JPST要員へのインタビューを通じ、参加者はこの地域の平和維持に関わる個々人の思いや考えに触れました。